
先日、お店で勧められた日本酒を買って帰り、その晩に飲んだらとても美味しかったんです。
でも、1週間後に飲んだら味が変わっていて、とても残念・・・

その日本酒はどんな種類でしたか? また、どこで保管していましたか?
日本酒はとても繊細なお酒なので、保管方法を間違うと味が悪くなってしまうんです。

えっ? そうなんですか!
私が買ったのは、純米大吟醸酒です。
開栓後、シンク下に入れておいたのですけど・・

やはりそうですか。それなら味が変わって当然です。
今から日本酒の味を損なわないための保管方法をお伝えします。
美味しい日本酒を楽しむための参考にしてください。
目次
日本酒の正しい保管方法
日本酒は、光と高い温度にとても弱いお酒なので冷暗所で保管しましょう。
光から日本酒を守るために、日本酒のビンには濃い色がついています。しかし、濃い色でも光を通してしまいます。

光と高い温度から日本酒を守るための保管場所としては、直接光が当たらず温度が低い場所が最適です。
具体的には、気温15℃前後で温度差が少なく、暗くて振動しない場所です。このような場所を「冷暗所」といいます。
日本酒のタイプ別保管方法
どんな日本酒でも冷暗所に保管しておけば大丈夫かというと、そうではありません。日本酒のタイプによっては、冷蔵庫に保管しなければならないものもあるのです。
ここからは、日本酒のタイプ別に適した保管方法をお伝えします。
日本酒は、原材料によって2つのタイプに分けられます。純米酒とアル添酒です。

原材料が米と米こうじだけの日本酒を純米酒、それ以外に醸造アルコールが入っている日本酒をアル添酒といいます。
純米酒とアル添酒では保管方法が違うので、それぞれの保管方法について説明します。
アル添酒の保管方法
アル添酒は『冷暗所』の保管で大丈夫です。
アル添酒は、防腐効果がある醸造アルコールが添加されているからです。
アル添酒「八海山」のラベルには、次のように書かれています。

品質には万全を期しておりますが、日本酒の香りや味等は保管条件(特に光や温度)や時間とともに変化します。本来の風味をお楽しみいただくため冷暗所で保管の上、できるだけ早めにご賞味ください。
清酒「八海山」より引用
開栓前のアル添酒は、冷暗所での保管で大丈夫です。開栓後はできるだけ早めに飲みきりましょう。
純米酒の保管方法
純米酒は『冷蔵庫』に入れて保管しましょう。
純米酒には、防腐効果がある醸造アルコールが添加されていないからです。
グルメコミック【美味しんぼ】「季節感たっぷり!秋の夜長に日本酒編」では、デパートの日本酒売り場について次のように語っています。

心ある酒販店では、大吟醸酒、吟醸酒は、必ず冷蔵庫に保存する。(中略)
コミック【美味しんぼ】季節感たっぷり!秋の夜長に日本酒編[作:雁屋哲画:花咲アキラ]p88より引用
ところが、このデパートでは、ワインはごたいそうに温度と湿度の調整装置のついた貯蔵庫に入れてるのに、ワインよりもっと繊細で弱い大吟醸酒、吟醸酒は、むき出しのままだ。
この環境で何日も置いておいたら、大吟醸酒も吟醸酒も確実に質が低下してしまう。
日本酒を大切にしている酒屋さんには必ず大きな冷蔵庫があり、そこに純米酒を入れています。
私がいつも利用している酒屋さんです↓

大きな冷蔵庫の中に、純米酒がたくさん並んでいます。
このお店では、焼酎は常温の棚に並んでいます↓

この酒屋さんでは、純米酒「吉田蔵」を冷蔵庫に入れて売っています。
吉田蔵のラベルには、保存方法について次のように書いてあります。

保存方法 直射日光を避け、冷暗所で保管
純米酒「吉田蔵」より引用
この記載から判断すると、純米酒の吉田蔵は冷蔵庫に入れる必要はなく、冷暗所で保管すればいいように思いますが、お店では冷蔵庫に入れてあります。
なぜでしょうか?
実は、私はこのお店で吉田蔵を年間30本以上買っていますが、1年を通じて常に同じ味かというと、そうではありません。
ものによっては栓を開ける時に「ポンッ」と音がします。飲むと発泡性の「シュワシュワ」とした舌触りです。しかし、日が経つにつれ発泡性はだんだん薄れていき、1週間もすると発泡性はなくなります。
もし、この吉田蔵を冷蔵庫に入れていなかったら、変化はもっと早く進むことでしょう。
このことから、要冷蔵ではない純米酒であっても、とても味が変化しやすい日本酒だと言えるのではないでしょうか。
純米酒は保管場所が冷暗所と記されていても、冷蔵庫で保管するようにしましょう。
生酒・生原酒の保管方法
純米酒の中には、火入れ(ひいれ:加熱して殺菌処理をすること)をしない生酒・生原酒という種類のものがあります。
「純米生酒」とか「純米無濾過生原酒」などと表示されています。
生酒・生原酒には、火入れをしたお酒とは違う美味しさがあり、とても人気があります。
しかし、保管方法には注意が必要です。
生酒・生原酒は要冷蔵
生酒・生原酒の保管方法は要冷蔵です。
生酒・生原酒は、酒の中で酵母が生きて活動しているので、非常に変化しやすい日本酒です。そのため、保管方法は『要冷蔵』です。
もし、冷蔵庫で保管しなかった場合は、短期間で味が劣化してしまいます。
純米生酒「奈良萬 中垂れ」のラベルには、次のように書かれています。

火入れ殺菌をしておりませんので、お酒は生きています。必ず冷蔵庫に保管し、お早めにお召し上がりください。
純米生酒「奈良萬中垂れ」より引用
ところが、生酒・生原酒であっても『要冷蔵』と書かれていないものもあるので注意が必要です。
純米生原酒「誠鏡 雄町八拾」のラベルを見てください。

生原酒なのに保管方法についての記載がありません。
もし、常温で保管すると数日で味が劣化してしまいます。
美味しいはずの日本酒が残念な味になってしまいます。
生酒・生原酒は、必ず冷蔵庫で保管し、できるだけ早く飲みきるようにしましょう。
開栓後の日本酒の保管方法
開栓後の日本酒は、できるだけ立てて保管するようにしましょう。

日本酒を立てて保管する理由は3つあります。
1つ目の理由は、日本酒は光と高い温度だけでなく、空気にも弱いということです。
日本酒は開栓すると、外気がビン内に入ります。
その状態でビンを横にして置いておくと、空気に触れる面積が大きくなります。
空気に触れる時間が長くなると、酸化が進んで味が落ちてしまいます。
2つ目の理由は、ビンを横にすると日本酒がフタに触れてしまうということです。
ガラスのビンに日本酒が触れても問題はありませんが、プラスチックやビニールなどの素材でできたフタに日本酒が触れると味が変化しやすくなります。
3つ目の理由は、日本酒が漏れることがあるということです。
4合ビンはスクリュー式の栓のものが多く漏れの心配は少ないのですが、一升ビンでは上から押し込むだけの栓がほとんどです。押し込むだけの栓の場合、横にして置いておくと日本酒が漏れることがあります。
特に、火入れをしていない生酒・生原酒であれば、さらにビンの先から漏れる可能性が高くなります。なぜならば、生酒・生原酒はまだ発酵を続けているので、気体が発生して体積が大きくなるからです。栓を開ける時に「ポンッ」と音がするのは、そのためです。

日本酒のビンは立てて保管するようにしましょう。
日本酒を冷蔵庫に入れる方法
光と高い温度に弱い日本酒を美味しい状態に保つためには、冷蔵庫に立てて入れましょう。
小さめの4合ビン(720ml)なら、冷蔵庫のドアポケットに立てて収められます。

しかし、一升ビン(1800ml)は、冷蔵庫のドアポケットには収まりません。

一升ビンを冷蔵庫に立てて入れるには、工夫が必要です。
一升ビンを冷蔵庫に立てて入れる方法
一升ビンを冷蔵庫に立てて入れるには、特別な形の冷蔵庫があると簡単です。
私の家の冷蔵庫には、縦型の野菜室があります。
上部の引き出しを1つ取り除いて、一升ビンを立てて入れられるようにしています。

一升ビンを収めるスペースを確保するために、お皿を重ねて保管するプラスチックの容器を使っています。この容器は、百円ショップで購入しました。

こうすることで、野菜室の中で一升ビンと野菜が共存できます。
一升ビンを2本開けた時は、この野菜室に2本立てて入れています。
一升ビンを冷蔵庫に横にして入れる方法
一升ビンを冷蔵庫に立てて収められない場合は、横にして入れることを考えましょう。
ビンを横にすると日本酒が空気に触れる面積が増えたり栓に触れたりしてしまいますが、低い温度の方を優先させた方が味の劣化を抑えられるからです。
一般的な家庭用の冷蔵庫では、一升ビンを横にして入れることができます。
横にして入れる際には、次の2点に気をつけてください。
栓をしっかり閉める
一升ビンの栓は、上から押し込むだけです。
軽く押し込んだだけでは、完全に奥まで入らないことがあります。
その状態のまま横にすると、口から日本酒が漏れてしまいます。
最後にもう一度、上からたたいてすき間ができないようにしましょう。

しかし、栓をしっかり閉めただけでは、漏れを完全に防ぐことはできません。
ビンの口にラップをかける
一升ビンの栓をしっかり閉めても、横にしておくと口から日本酒が漏れることがあります。
特に、生酒・生原酒はまだ発酵を続けているので要注意です。
そこで、安全のために一升ビンの口にラップをかけ、しっかり輪ゴムで止めておきましょう。
こうすることで、わずかな漏れならば冷蔵庫を汚さずに済みます。

この状態で、冷蔵庫に横にして入れておくようにしましょう。
小さいビンに分けて冷蔵庫に入れる方法
冷蔵庫に一升ビンを入れられないときは、4合ビンなどに分ける方法が考えられます。
しかし、この方法はあまりオススメできません。
注ぎ分ける作業中に日本酒が大量の空気に触れてしまうからです。
大量の空気に触れると酸化が進み、味が劣化してしまいます。
美味しい日本酒の味を落としてしまうのは、もったいないですからね。
また、衛生面でも心配な点があります。
純米酒は、防腐効果がある醸造アルコールが添加されていないので、雑菌の混入を嫌います。
生酒・生原酒は、滅菌のための火入れを行っていないので、なおさら雑菌を嫌います。
これらのことを踏まえた上で、4合ビンなどに注ぎ分けるには、次のことに配慮しましょう。
◎冷えた状態の日本酒を注ぎ分けること
◎ビンや漏斗(ろうと、じょうご)を滅菌すること
4合ビンなどに注ぎ分ける場合は、細心の注意を払って行うようにしましょう。
日本酒、特に繊細な純米酒は、冷蔵庫で保管しなければ短期間で劣化してしまいます。
一升ビンが冷蔵庫に入らないという理由で常温保存するよりも、何らかの方法で冷蔵庫に入れた方が美味しさを長く保つことができます。
まとめ
日本酒の保管方法は、アル添酒は冷暗所、純米酒は冷蔵庫が基本です。
冷暗所はシンク下や床下収納などになりますが、真夏では20℃以上になることも考えられます。そうなると日本酒の保管場所としては不適格です。
これらのことを総合すると、日本酒はどのタイプであっても冷蔵庫で保管するのが安全です。